(一)
江戸→米沢(文久三年冬)
拝啓
於幸様には如何お過ごし候にや。
昨日、府内に初雪が降りました。今年の雪は遅う御座います。初雪見参の下され物を頂戴し、その名も「はつ雪」なる菓子をお相伴に与りました。
於幸様にもと思い立ちて、御用菓子屋に用立てるよう申し付けましたが、諸侯の注文殺到して入手出来ませぬ。代わりと申しましては恐縮ですが、雪餅をお送りいたします。
変ったことは取り立ててございません。今月五日に御城出火致し、これは二の丸が少しく焼けたのですが、そこもとと小姓の立見とで城内先駆し、然るにのちほど上様よりお褒めのお言葉を頂きました。
御身体ご自愛なさいますよう。
梅枝にいささ雪積みさむしろの衣手冴えて夜半の初雪
癸亥十一月十三日 定敬
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注:
【於幸様】…上杉幸子。幸姫。松平定敬の実姉。米沢藩第13代藩主・上杉茂憲に嫁した。
【初雪見参】…宮中や城内では、初雪が降ったおりに「初雪見参」といって行事をおこなったという桓武天皇の頃からあるという。
【はつ雪】…同名の和菓子があったとされる。十二単の色に同じ名前がある。
【雪餅】…きんとんでつくった菓子。中は卵黄と白餡を混ぜて餡玉をつくり、山芋と白餡を混ぜた裏ごしを雪のように降らせたもの。
【御城出火】…江戸城出火のこと。定敬は立見鑑三郎(当時は小姓)と一番乗りし、将軍・家茂のおぼえがめでたかったという。
【小姓の立見】…立見鑑三郎尚文。のち定敬の京都所司代時代、在京、横目となる。
【上様】…第14代将軍・徳川家茂。
【定敬】…桑名藩第13代藩主・京都所司代・松平定敬。
短歌の解説は、「解説・あとがき」に記す。
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