(二)米沢→京(文久三年冬)


 じつは大弼様、京都警衛の為に、式部大輔様ともども帰京いたしておりました。
 米沢は十月の晦日から小雪舞い、師走の頃には一面しろがね色に御座いますれば、まだ此方の寒さに馴れません。江戸のお屋敷に居た頃のように外出もままならず、日々つれづれに過しております。
 そうでした。先日は可愛らしい雪餅を頂き、有難くご賞味いたしました。
 まったく雪玉のごと愛らしい。食べるのが勿体無く、飽かず眺めておりましたら欽之助と雪玉合戦をいたしました折、思い出しました。
 あの時は、乳母やにひどく叱られましたね。
 欽之助は雪玉の中に松ぼっくりを入れて大層知恵が回ると言われ、呆れられていましたね。腕白だった昔を思い出します。
 欽之助などと呼び捨てにして、申し訳御座いません、越中守様。
 京におかれましては、何とぞ御身体お気をつけ下さいませ。
 それではまた雁の使お待ちしております。


  冬ざれの白嶺に問はむ雪菩薩暁に逢うと君が固めし


                                     癸亥十二月吉日 幸


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 注:

 【大弼様】…米沢藩第12代藩主・上杉斉憲。文久三年に京洛警固を拝命する。
 【式部大輔様】…斉憲の世子のちの第13代藩主・上杉茂憲。於幸の夫。
 【欽之助】…松平定敬の幼名。のち【 】金+契之助。
 【雁の使】…手紙のこと。

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