(四)米沢→京(元治元年夏)

 
 突然のことにて吃驚いたしました。在京の大弼様よりのお便りで、貴方様の所司代御就任を知りました。此方こそ、御祝儀が遅れました無粋、御ゆるし下さいますよう。
 さぞや華々しく凛々しいお姿で都大路を闊歩なさっておいででしょうね。貴方様と別れて輿入れしてから、早二年余、お顔も大人びておられますでしょうか。
 本当によろこばしいことです。
 三月に姫をうみました。式部様にお目元が似ております。産後の肥立ちがよろしからず、ひと月ばかり臥せっておりましたが、貴方様のお祝いを聞き、何だか生気が出てまいりました。
 肥後守様にもよろしくお伝え下さいませ。
 米沢はいま、桜の盛りに御座います。山々の桜木の淡いやら桃花のように濃いしだれやら、みなみな取り混ぜて貴方様にお目に掛けたいのですが、妾には絵心も御座いません。
 せめて桜木の皮で染めた袱紗をお送りいたします。
 いつか米沢へお越し下さりませ。その時は、やはり五月の花の頃がよう御座います。御多忙の貴方様に余計な口説ばかり申し上げてあい済みません。


  独り寝し明かし五月の短夜に京のたより告げし雷


                                     癸亥五月二十一日 幸

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 注:

 【輿入れ】…於幸の上杉家への輿入れは文久二年十二月九日。
 

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