(七)
京→米沢(慶応二年秋)
拝啓
於幸様には御息災でお過ごし候にや。
上様御薨去なさられ、斯くの如き曇天の日々。こころ晴れませぬ。
仰ぎて身ゆる比叡の山、霧雨驟驟、先立つものは涙なり。日毎に深まる秋寒の淋しさよ。
寝覚めて朝に聞こふる鐘の音か。
先日、式部大輔殿に北野天神の御札を託し、参詣致しました。
於幸様のおん病癒ゆるに尽力すべし。
君なくて荒れたる宿の浅茅生にあきつ飛ぶなる秋ぞかなしき
丙寅八月吉日 定敬
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注:
【上様御薨去】…将軍・家茂は慶応二年七月二十日に薨去。
【北野天神】…北野天満宮。梅鉢紋は桑名久松松平家と同じ。