あとがき
副題に「御庭番残照」とした。
内容的には琉璃が主人公であって、幕末当時の事件が深く関わってくるので「御庭番シリーズ」に入れてもいいのではないかと思った。
とはいえ、静寛院宮と家茂のエピソードが中心となって、あくまでそれを取り巻く人々の明治維新前後である。
「膳所藩事件」には、本当は御寝所を爆破するつもりだったとか、釣天井(これは「宇都宮の釣天井」の話を想起させる)を仕掛ける計画になっていたとか、さまざまな風説があるが、実際はよくわからない。ともかく、膳所藩の勤皇派が長州藩と繋がって不穏な動きを示していた、というので藩士が処分されたのである。上阪三郎衛門という人物にしても、様々な経歴が語られていて、判然としない。本編は、そのことを逆手にとって、御庭番がらみで話を運んだ。こういう事件は、作者にとっては好都合な事件といえる。
「御庭番シリーズ」の『雪女郎恋歌』で、琉璃が松平容保と面識を持つ、というくだりを書いているが、まさに「膳所藩事件」こそ、その事にあたる。この事件を京都守護職に報せたことによって、家茂の覚えも目出度く、異例の出世の糸口となったという説明につながっている。所司代とはニアミスになっているが、そこで定敬と琉璃が出会っていれば、話は違った方向になっていくので、まさにその時京に居た容保様さまである。
また、京菓子細工の緻密さは、芸術と呼んでよい程で、それを間近に見ることが出来たゆえに、「雛人形を菓子で作る」という発想を思い付いた。これも、地の利といってよいだろう。
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