第二十一話
 〜叛逆の暗天使 Vivo per la tua morte〜
(前篇)


第一章 奪われた翼  THE LONGING
 
 (1)

 緑の畝が続いていた。もうこの時期になると、メキシコ湾からの風が心地良い夏だ。
 サトウキビ畑の上を灰色の鳶が円舞旋回していた。空は限りなく高く、そして青く澄んでいた。
 太陽が西に傾き始めた。少女は走った。
 汗が木綿の修道服を貼り付かせ、重いロザリオは胸の上で無尽に踊った。束ねた長い髪が揺れる。その弾む動きがうっとうしいので、少女は思わず髪を解いて尚も走った。深い青の瞳が、何かを頻りに捜して動いていた。
 サトウキビ畑は、迷路のごとく入り組んでいて、しかもその丈は成人男性の身長を超える程に成長していた。少女は闇雲に走った。緑の葉が頬をぶ弄っても、止まらなかった。
「ブラーッド!」
 少女は立ち止まって叫んだ。返答が無いので、続けて男の名を呼んだ。
「ブラーッド!」
 ざわざわと畝が揺れ、緑の隙間から男が姿を現した。麦藁帽の代わりに灰色のテンガロン・ハットを首に引っ掛けていた。頬にうっすら生やした髭に、ワークシャツの下からはみ出た黒い腕と強い胸毛が、野性的な印象を醸し出していた。
 だが、男の髪の毛は赤毛だった。血の様に赤黒い赤毛だった。
「大きな声で呼ぶな、アルテミス」
 ブラッド・ワルドーフは、しかめっ面をした。右手には駕籠をぶら下げていた。駕籠の中には、刈ったばかりのサトウキビが無造作に詰め込まれていた。再び、ガサガサという音と衣擦れが響いた。今度は、出て来たのは女だった。浅黒い肌の豊満な肢体の女だ。アナベラという、町の酒場娘だった。
 アナベラは、解れた髪を直しながら、ブラッドを置き去りにそそくさと歩き出した。
 すれ違いざま、少女は女の視線がいやにねちっこく絡み付いたのに、不快を覚えた。芬々と情事のにおいが漂った。
「元気ね、シスター(お嬢ちゃん)」
「イホ・デ・プータ(売女)!」
 アルテミス・サフィールことミスティ・サファイアは、女の大きく開いたドレスの汗ばんだ背中に向かって罵り言葉を吐き掛けた。酒場娘は、罵声など何処吹く風で悠々と去って行く。
 ミスティの細い肩に、ブラッドの分厚い手が掛かった。ミスティは振り返って、男を思い切り睨み付けた。
「そう怒るなよ。ツケをためてるんだ、アナベラに文句を付けるとオレ様が干上がっちまう」
「あら。それより先に、何処が干上がったのかしらね」
 ミスティは、態(わざ)と憎まれ口をきいた。十二歳とは思えないくらい生意気な、そして臈たけた雰囲気がある。
 少女とはいえ、もう既に身長はやや小柄な大人の男並みにはあった。
 容貌は、まるで美少年のようだが、化粧をすれば充分女として通用する端整さだ。
 ブラッドは手を離した。
 何気なく見遣った、ミスティの項に貼り付いた柔らかいブルネットの曲線から胸元に少女の中の女の部分を見てしまった気がした。少なくとも、身体は申し分ないくらいに成熟していた。酒場娘のアナベラに負けていない程、胸の高さは充分だった。
「そうじゃなくて。酒場女と乳繰り合ってる場合じゃないわよ、早く来て!」
 ミスティは、そんなブラッドの腕を掴んで引っ張った。
「何があった?」
「聞くまでもない事よ。あいつらが教会に来たの」
 ミスティとブラッドは、走りながら会話した。
 あいつら、とは性質の悪いゴロツキ共のことだ。それがどうして教会に関係あるのか、二人の間では最早言うまでも無いことで、そもそも流れ者であったブラッドが、修道女ミスティと関わっているのも、ゴロツキ共が原因の縁といえた。
「シスター・フィロメルは?」
 ブラッドは訊いた。
「…立て篭もりよ」
 ベラクルス市の外れの片田舎にあるこの町は、海に近く、サトウキビだけが主な収入源の町だ。
 住民の七割方はサトウキビで食っているといっても過言ではない。それも二十一世紀末までは、サトウキビではなくむしろカクタス(サボテン)の生えた乾いた土地だったのだが。
 今やカリブ海北岸の方が乾燥地域といえた。そうして、中米大陸のほぼ真ん中に当たるメキシコ湾岸は湿った亜熱帯と化していた。それも、異常気象のお蔭だろう。
 それは兎も角、平和そのものだったサトウキビ畑の町に暗雲が垂れ込め始めたのは、この一年ばかり。
 発電所を作ろうという計画が持ち上がったのである。
 当然のことながら、その計画はヴァティカン国土省のお達しに拠るものであったが。発電所は太陽エネルギーを利用した光発電所である。だが、言うまでもないことだが、太陽発電所は広大な面積を必要とする。町の三分の一が、発電所の利用地となってしまうのだが、それでは従来のサトウキビ畑が成り立たない。
 国土省としては、農家の人員を発電所で雇うという提案を示したものの、既に地場産業化して、一世紀以上も従事したサトウキビ産業を離れられないという人間が多数おり、また愛する土地を手放す口惜しさから、反対派が多く出た。
 実際、その反対派運動の先導を切っていたのが、ミスティの修行している修道院であり、指導者はシスター・マリア・フィロメルだった。
 町で唯一の修道院であり、礼拝堂を持つ教会には、まだ若い修道院長であるマリア・フィロメルと数名の修道女、そして遥か故郷を離れてやって来た一人の少女だけだった。
 十分ほど走り、ブラッドとミスティは教会の裏手に出た。だが、敷地に入ることは出来なかった。
「うわー、また増えてる」
 ミスティが呆然と口を開いた。教会を取り巻く白い塀の周りを、如何にも柄が悪い風体の男達が数人取り囲んでいた。
 ブラッドは、ミスティの腕を引っ張り草叢に連れ込んだ。
「お前、中にいたのか?」
「そうよ。裏から出てきたんだけど」
「ふむ…どうやって出てきたのかと思ってな」
「簡単よ。二階から飛び降りただけの事よ」
 ほう、とブラッドは目を細めて頷いた。修道女の尼僧服はコスモス色をしていて、作業用にスリットが大きく開いている。その下にアンダースカートを穿いているのだが、ふわふわした頼りないものだ。
「まぁ、幾ら連中でも、ガキのパンツなんか見ても嬉しかないか。それも穿いてりゃの話だが」
「いやねぇ、パンツくらい穿いてるわよ。スカートの時は」
 ミスティは、いきなりブラッドの鼻を摘んだ。
「そういうデリカシーのない事ばっかり言うから、シスターに嫌われるのよね」
「いつ嫌われたって?大体、オレはあんな色気の無い女など…」
「うるさい、静かにして!」
 男達が何か叫び出したのを合図に、ミスティはブラッドの顔を押し退けて藪から顔を出した。
「さっさと出て来いこの腐れアマ!」
「強情張ってるとお××にこいつをブチ込むぞ!」
 口汚い罵り言葉の嵐だ。
「今に始まった事じゃない。ずっと、ああなのよ」
 ミスティはブラッドを見上げて言った。ブラッドは、フンと鼻を鳴らして背負った籠からサトウキビを一本抜き取り、長く伸びて茎を被う葉を剥き捨てた。暑さでうんざりしてきたところだ。サトウキビを一齧りする。甘いが、精製されない渋みを持った汁がブラッドの口腔に広がった。
「オレもいい加減思ってたんだが、諦めた方が賢明じゃないのか?」
「諦めるって、発電所が建ってもいいってこと?」
 ミスティは大きな青い瞳を剥いた。
「仕方無かろう。お上の命令なんだから。何てったってそれに、修道院はヴァティカンの管轄だからな。いつまでも反抗していられまい。第一、シスターはどうするよ、今後」
 ブラッドはサトウキビをじわじわと噛み砕きながら、言った。
 修道院は立ち退く代わりに、シスター・フィロメルはメキシコ教区へ移るように命令書が下っていた。そして、ミスティ自身はローマにあるグランゼコール(専修学校)に入る事に決まっていた。
「でもだからといって、『上の遣り方は気に食わない。これでは百年前も二百年前も同じ。一体何処がどう違う遣り方なのか』ってシスターはね」
 ミスティは、少し申し訳なさそうにブラッドに向かって言った。
「で、お前はどうなんだ?」
「…シスターの言う事は正しい。でも、国土省が言うのも判らないワケじゃないけど」
「お前はどうしたい?」
 ブラッドの金色の目が、厳しくミスティを見据えていた。
「私はシスターが好きだから、シスターの味方をするに決まってるでしょ」
 ミスティは、きっぱりと答えた。ブラッドは、ミスティの瞳をじっと穴が開くほど見詰めた。さしもの少女も、これには緊張を強いられて二の句が継げない状態だった。試されているのか。
 ややあって、ブラッドは顔を背けると再びサトウキビを齧った。
 折った茎の間から、白くて嫌らしい格好の虫が這い出て来た。ブラッドは、それを無造作に地面に捨てる。サトウキビの甘い汁を吸って成長する蛾の幼虫の類だった。
 ミスティは、首をぶるっと震わせた。甲虫類は兎も角、長くて軟体動物のように蠢く虫の姿は、吐き気を催すほど苦手だった。
「いい表情だ」 
 ブラッドはニヤリと笑い、腰に手を当てた。まるで魔法のように、ブラッドの右手に現れたのは二丁のパウダーガンだった。いずれも同じ形状のベンチレーターリブ付きの銃身だったが、一方は銀色に光り、もう一方はブルーステンレスの輝きだった。
 ブラッドは、ブルーステンレスのバレル(銃身)を持つパウダーガンを、ミスティに渡した。
「何よ、これ?」
「パウダーガンだ。お前が持て。シスターを護るために使え」
「はぁ?」
 ミスティは訳もわからずに、見よう見真似にブラッドのグリップを見て銃把を握り直す。だが、如何せん左利きである故に鏡を見るようなものだった。
「それだと手の皮がずる剥けになる。いいか、こう握れ」
 ブラッドの左手が添えられ、右手がミスティの手を包み込んだ。
 ミスティは、この時に教えられたグリップの型を忘れまい。そうして、大きく力強いブラッド・ワルドーフことキャプテン・ブラッドの手の温もりを。
 ほんの数分間だが、草叢の中でパウダーガン教習が始まった。
 ブラッドはミスティの肩を抱くような形で両腕を添え、少女の腕を伸ばさせた。水平に上がった腕の先に赤いフロント・サイト(照星)が見える。
「眉間とフロント・サイトが同じ延長線上にあるように。これが狙撃の基本だ。後は引き金を引けばいい」
 ミスティは言われたように、やってみた。トリガーに指を掛ける。だが、汗ばんだ指先が滑った。親指と人差し指の股が引き攣った。それに、初めて持つ本物のパウダーガンは、少女には少々疲れを感じさせる重さだった。
「重いわ」
「引いてみれば判るだろうが、そいつはダブルアクション・リヴォルヴァーといって、シングルよりもトリガーが重い。引き切る時に引っ掛かる感じがするだろう。それがハンマー(撃鉄)を自動的にコックしていると言う事だ」
「よく判んないけど、長期戦には不利みたいね」
 と、ミスティは荷が勝ちそうな気分で言った。嫌いではない。むしろ先程、銃身を見た時に胸が高鳴ったのは、一度握って見たかったからだ。どうも、上手く扱えそうには思えない。
「…ブラッド?」
 ミスティは見上げた。ブラッドの金色の瞳は、既に修道院の入り口に吸い寄せられていた。
 一人の男が歩いて来た。灰色の薄汚れたテンガロン・ハットを被った男だった。
 髪は蓬髪といって良かった。黒い髪は、まるで油でも塗ったかのように濡れ光っていた。周囲で騒いでいたゴロツキ共が、一斉に退いた。その男の登場が物語っているのは、この後の打開だっただろう。
 ミスティは、まるで憑き物に憑かれたかのように、男の所作を見ていた。恐怖ではなく、何か異様な威圧感を感じる。男の顔は良く見えないが、恐らくは無表情なのだろう。
 唐突に、ブラッドは走り出した。
 それも修道院に向かってまっしぐらだった。ブラッドは叫んだ。
「ハンドキャノン使いのマーリオ!」

 窓の外は、黄色い砂が舞っていた。風が強い宵闇に、雲が薄く引き伸ばされた綿飴のように流れていた。
 マントルピースは、もう何年も使われていなかったかのように煤けて黒く、悲しい炎が我が身を焦がして揺れていた。
 湿気た潅木ばかりを焚いた割には、煙は少なく明るい炎だった。
 恋物語を聞くには明る過ぎて、夢物語を語るには暗過ぎる炎だ。
 少なくとも、あの亜熱帯の湿っぽいが何処か陽気な空気を思い出すものではない、とミスティ・サファイアは思った。懐かしいが、もう二度とあの地を踏む事はないのだろう。そんな気がしていた。
 思えば、伯父であるグレナデン・サフィールが何ゆえにまだ幼かったミスティを、遠く離れた中米の修道院に送ったのか。いまだによく判らない。
 最早、ブラッド・ワルドーフがどういう経緯でベラクルスの片田舎にある修道院に居着いたのかさえも、忘れていた。
 尤も、当時のミスティにはどうでもいい事だったのかもしれない。父親を知らずに育った少女にとっては、流れ者の無頼漢とはいえ父性を感じる人間と言えただろう。或いは、生まれ故郷に無い疎外感を異国に抱いた少女にとって、それは一種の郷愁とも思えたのかも。
「結局、ブラッドはマーリオというパウダーガン使いと痛み分けになって…修道院は没収されてしまったわ。マーリオは、ヴァティカンが派遣した手だれだったという訳でね」
 ミスティは、薄いグラスになみなみと満ちた赤い液体を見詰めた。甘い甘い果実味を漂わせるトスカーナ産ワインがグラスに涙をつけている。苦いチョコレートのような香りがした。
 少し離れて、向かいに座っているのはアーチレリー・ブールヴァルドだった。
 彼の金髪は、暖炉の炎の色と同じに見えた。
 相変わらずの美男子ぶりは、黙っていると冴えたが、目の下に激しい疲労の色が伺えた。寝不足から来るものだ。
 白衣は着ていなかったが、ネクタイだけはきっちり締めていた。それも、相変わらずシャツの色とミスマッチと思われるような派手な柄物を。ちなみに、高価なシルクシャツの色は萌黄色だが、ネクタイの基調色は夜明けのような紫色だった。
 ミスティは、アーチの表情がほんの一瞬、奇妙に曇ったのを読み取った。奇しくも、それはブラッドが対峙した相手の名前を言った時では無かったか。
 ハンドキャノン使いのマーリオ。
 暖炉を間に、二人は静かに軽やかな酸味と甘い期待のアルコールを舐めつつ話するしか、する事は無い。それも、臥所(ベッド)に入ってするような類の話は皆無だ。
「…それで、ハイハットじゃあキミは息巻いてたのか」
 アーチは、苦笑を押し上げつつ言った。
「立ち退きと聞くと、思い出してしまう。私とした事が、随分差し出がましい事しちゃったわ」
 そういって自嘲気味に言うミスティの表情は、普段のクールな女巡検使と別人のように柔和だった。只、彼女の顔色はいつものやや日焼けした小麦色の艶が無く、憔悴に満ちていた。
「…で。その後の私の事は、アナタもおじさまから聞いて知ってるでしょう?」
「いや。何しろオレは、最初キミの顔さえ教えて貰っていなかったんでね」
 アーチは、グラスの底をゆっくりと回した。濃い色調の液体がまろんで、甘酸っぱい独特の芳香を立ち上らせた。ミスティは、くすりと含み笑いをする。
「でも、色々と知ってるでしょ?それはどうしてなのかしら」
 と、ミスティは意地悪く言った。
「キミの事を知りたいからさ。ベッドの上以外で」
 アーチは組んでいた脚を開いて、ソファから身を乗り出した。
「キミがおじさまの言い付けで、オレの事をようく知っている以上に」
「それは嫌味?私は、アナタがどんな経緯で医者になったのか、何でファーストフードが嫌いなのか、今まで一体何人の女と寝たのかなんて興味無い。興味あるのは、いつもその悪趣味なネクタイくらいね」
 ミスティは、含み声で言った。
「『男はいつなんどきも美しくあれかし』と、昔の人は言った。オレは死ぬ間際でも、いや死に際だからこそ靴が汚れてないか、ネクタイは歪んでないか心配するぜ」
 アーチはあからさまな喜色を、端正な顔に浮かべた。
「しかし、そんなに悪趣味だって言うんなら、今後はキミに選んで貰おうか?」
「却下」
 ミスティは素気無く断った。どうせ変える気は無いのに決まっている。
 尤も、そんな簡単に赤の他人の言い成りになるような男なら、ミスティは見向きもしない。たとえそれが、自分の信頼するに足る人間の言であってもだ。アーチは笑いながら、ちぇと舌打ちした。
「それでももっと知りたいというのなら、続きを話してもいいわ」
 少々まだるっこしい手続きを経て、ミスティが話を再開するのが判ると、アーチは再び深くソファに座り直した。彼女がそういう勿体ぶった言い方をするのは、精神安定の為ではなかろうかと思う。
 明らかに、ミスティは変わっていた。
 譬え悲しんでいても、怒りに満ちていても、以前の堅苦しさを感じない。少なくとも、アーチに対しては年相応の女の気儘さを正直に振りまいているように思われた。
 ブラッド・ワルドーフ―通称キャプテン・ブラッドという男の身の上は、定かではない。
 名前はアングロサクソンあるいはドイツ系移民に思えるが、それも本名ではないだろう。そもそも、「ブラッド」は赤毛の渾名に違いないが、赤毛の人間は、南ヨーロッパ人には少ない。
 しかじかというのも、彼はかつてヴァティカン五軍の一、クローチェ・セレステ(青十字軍)に所属し、事実上海軍として機能していた軍部で一個隊の隊長を務めたという経歴しか残されていないからだ。キャプテンというからには、洋上の男だったということだ。
 だが、その軍隊も解体してしまってからは、一体ベラクルスに現れるまで何をしていたのか判然としない。たった一つ確かなのは、ブラッドが《称号》(ティットーロ)持ちだったという事だ。そして、パウダーガンもろとも、その《称号》をミスティ・サファイアに譲ってしまったという事も。
 ジャバー・ウォックもマーリオも持たない《称号》を、ブラッドは保持していた。
 《称号制度》が施行された後に、ブラッドはパウダーガン使いとして世間に認められたのだろう。だが、何ゆえに先の二人、或いはもっと多くの人間にそれが与えられなかったのか。
 恐らくは、表面的でない忌々しい曰くがあるとしても、今のアーチではただ徒に推測する以上の事は出来なかった。
 
    第一章(2)へつづく

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