あとがき

 私にとっては、単なる勧善懲悪を書くほうが難しいと思う。罪を犯す人間にもそれなりの事情があり、正当ではない行為にも理由が存在する。そこを、ちょっとイカれた小悪党をまたまたイカれた正義の味方が成敗するという構造は、見てて面白いがサテ書け、と言われるとどうも二の足を踏んでしまう。否、書けない。
 この話は「京都所司代事件帖」シリーズの一として書いたが、別段主役は服部半蔵でなくてもいいじゃないか、というところ、やはり半蔵でなければいけなかった。
 立見鑑三郎の天才肌的な頭脳では解決の仕方が違う。かといって、年令の高い人物をあてることは出来なかった。至極まっとうな懲悪話ではない、という為には、やはり極めて主君に忠実な家臣である半蔵が適役と判断した。彼の行動基準は如何に悪逆を暴こうとするも、飽く迄主君、主家の為であって、哀れな一人の人間を情もて救うことではない。
 かといって、仕事一途なだけの面白味のない男ではない、というのを最後の数行で明かしたつもりである。


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